神津 善之介 公式サイト

2009年3月


今月の表紙で、絵はウンチだと書いてしまったが、
実際に絵とはそんなものだろうと思う。
ただし、少し補足させて頂くと、「ウンチ」と言っても別に変な意味や汚いものだと
言う事ではなく、自分の身体から湧き出るもの、そしてそれを絞り出す行為が絵であ
ると言う意味で、これは絵に限らず、物作りをしている全ての人に言える事だと思う。
それを「自分自身を削って」や「命をすり減らして」と表現する人たちもいるだろう。
ただ僕にとっての絵はそこまで大層なものではなく、排泄欲のように自然と突き上げ
てくる体感なのだ。そして、溜め込むと辛くなる。
まさにウンチだ。

僕は日々このウンチをイーゼルに乗せ、ライトをあて、頻りにああでもないこうでも
ないと悩んでいる。

そして、このウンチ、生み出す人の様子にしっかりと影響を受ける。
その人の知性は勿論のこと、感情や環境も栄養として吸収され生み出されるので、辛
い状況にいれば辛いものが出てくるし、ピースフルな状況ならばピースフルなものが
出てくる。

だから絵を見てもらうと言う事は、まさに自分のウンチを人に見せるように、自分自
身をさらけ出す行為だと僕は思っている。

少し話が逸れるが、もの作りにおいて技術はとても重要である。
技術がなければ伝えられない事が沢山在る。けれど技術だけでもダメらしい。
人は上手いと言う事だけでは感動しない。
上手いものはただ上手いと感心するのであって、感動はしない。
技術を超えて、作り手が込めた思いや自然と染み込んだ作り手の感情が、作品から伝
わってきた時に感動は生まれるのだと僕は思う。

だから色んな事を経験し、それを自分の栄養として吸収し、人に見られても恥ずかし
くないようなものを生み出すために自分を鍛え高めなければいけないと思っている。
・・・と言うわけで、今の僕は色んな栄養を吸収しているところなのだ。

やたらと長くなってしまったが、以上のような屁理屈を捏ねながら、今日も僕は散歩
に精をだす。

フランシス ベーコンの展覧会をプラドで見たり、
格安航空券(19ユーロ:約2400円)で北の街ビルバオに行って、村上隆氏の展
覧会を見て、深夜バスを乗り継いで戻ってきたり、
初めて、マドリード動物園に行ったり。
日々は引き隠りの僕だが、最近は随分と動き回って、いろいろと良いものを吸収した。

さて、これを読んで僕が随分と優雅な生活を送っていると思われるかも知れないが、
ハッキリと言わして頂くと、優雅だ。
ただし、かなり貧乏なうえでの優雅さ。自慢ではないが、僕はなかなかの貧乏絵描き
なのだ。

しかし優雅な生活は貧乏でもできる。
僕は優雅とは心の持ち様だと思っている。自分の生活や環境を楽しめば良いのだ。
逆にお金持ちでも浅ましい生活をする人はいるだろう。

3月に入って暖かな日が続いている。
この暖かさや天気の良さ、そして7時すぎまで明るい太陽は貧乏絵描きの心を随分と
癒してくれる。
外では皆シャツ1枚で過ごせるような暖かさなので最近は久しぶりに外食ができる。
ちなみに神津家で外食と言うと外でお弁当を食べる事である。
アーモンドの花を見ながら寝っ転がって、お弁当を食べるととても幸せだ。
スペインにある神津家の家計は非常に冷え込んでいる。
画材費は下げられないので、何を減らすかと言うと、嫁に渡す食費が随分と減らされ
るのだ。
そのうえ、突然僕が遠くまで出かけると言い出すので、それは尽きてきた僕の貯金と
家の食費から捻出される。
それでガクンと減った食費でも、安いスーパーや市場を見つけ、毎日嫁はそこそこ旨
いものをテーブルに用意する。
その部分だけは「アイツ良くやるな!」と思わされる。

ただしかし、ここで欲をだし、僕は考えた。
「この食費でこれだけ作れるならば、食費をもっと減らせるのではないか?」と。

そこで先日僕は、花を見ながらお弁当を食べ上機嫌の嫁に聞いてみた。
「ねぇねぇ、来月の食費を今月の3分の2くらいでやってみない?」

嫁は笑顔で鳩を指差し、
「善、鳩って食べられる?」
「・・・・」

のどかな昼下がりの公園はシーンと静まり返り、鳩の鳴き声だけが響いた。

このとき僕はふと気付く。
もしかしたら、優雅さも浅ましさも嫁次第なのかも?と。

神津善之介

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