気が付けば今年も終わろうとしている。
自分のコラムを見ると未だにTシャツと短パンで
阿呆みたいに猫と戯れているではないか!
今月こそ何か書こうと思いつつも、頭の中の無精者が「まぁまぁそれはまた後で」と
耳もとで囁くので、ついつい先延ばしにしてしまった結果、
クリスマスも間近というのに、未だに短パンオヤジのコラムが最新号なのである。
本当に自分が情けない。
今月は気を引き締め直してコラムを書かせて頂きます。
さて、今年は久しぶりの日本で年末を過ごすのだが、
テレビをつけたら総集編ばかりやっている。
総集編と言うものは、ハッキリ言って手抜きなのではないか?
物づくりは手間ひまをかけて、やっと人様にお見せできるものだと僕は思う。
手抜きはイカン、絶対に!
と言うことで、書き損ねた今年の展覧会をフラッシュバックでお送り致します。
まず9月 パリ、吉井画廊
2004年から東京でも開催している「MADE IN SPAIN」展をパリの吉井画廊で開催。
1階は僕の個展で、2階はペップ スアリ、ホルヘ イスキエルド、ロベルト マルティ
ン、アレハンドロ コモリの4人展と言う形での展示になった。
画廊の在る場所がものすごい高級画廊街なので、隣の画廊ではマチスやシャガール、
ドガと言う絵が並ぶ中、僕達みたいな田舎者のスペイン作家は、パリと言う都会の息
吹きに震えながらも、無事にそして盛況にオープニングを迎えた。
多分、シャンソンやジャズが似合うエスプリの効いたオシャレな街の人々には、
サルサやフラメンコギターのような土臭い僕達の絵が逆に新鮮に映ったのだろう。
オープニングではロベルトの持ってきた「ハモン ベジョータ」スペイン生ハムとス
ペインの赤ワインが大人気で「MADE IN SPAIN」の文字どおり絵画展というよりも、
物産展として大盛り上がりとなった。
9月の気持ち良い夜風の中、見に来てくれた人も画家達も酔いが回って良い気分にな
り、僕も尊敬する大好きな仲間達と共に心から笑い合い、最高に幸せな夜を過ごした。
僕は徹夜続きで少し痩せ、元気が無くなっていたが、この夜に皆から元気を貰い、ま
た絵に打ち込む事ができた。
10月 神戸、大丸百貨店
神戸では個展を開くのが初めてだったので、ここ3年分の絵の中から選んだものを展
示した。
初めての会場だから、きっとアウェ-感があるだろうと思った。
しかし会場に着くとそんな感じはなく、沢山の方々に見て頂き、とてもポジティブな
ご意見を頂いた。非常に嬉しかった。
そして、神戸の旨いものをたらふく食べ、個展前に減った体重を3日で元に戻した。
今思えばその時が、年末までの日本滞在における「デブ街道」のポールポジションに
立った瞬間であった。
10月 青山、プロモアルテ ギャラリー
コロンビア、日本、修交100周年記念の企画展のお誘いを受け、
コロンビア人とのグループ展に参加させて頂いた。
コンクールなどで、初めての人と一緒に展示される事はよくあるが、
その場合、会場ではあまり他の作家とは会話を交わさない。
今回は日本人4人コロンビア人4人と言う組み合わせで、割とフレンドリーな雰囲気
の展覧会だったので、同じような生業の、初めてお会いしたそれぞれ違う哲学を持つ
作家さん達とお話させて頂いた。
コロンビア人も話す言葉はスペイン語なので、かなり深い話ができ、楽しい時間を過
ごした。
しかし、この頃から、久しぶりに会う人々に「あれ?太った?」と言われるようにな
る。
10月から11月 銀座、松屋
今年の最後であり、メインイベントである松屋の個展。
今年に入り僕は、準備のためにマドリードの個展で実験作品を発表したりして、この
個展に向けて非常に力を注いできた。
勿論まだまだ技術的にも考えにおいても、足りないところは沢山あったと思う。
でも、今持てる力を出しきったと思っている。
数年前からの網膜剥離もあり、今年に入り目眩で倒れたりして、最近では突然自分が
ダメになって、今描いている作品が最後の作品になってしまうかも知れないという危
機感が常に自分の中にある。
だから、その時その時の個展で自分の力が全て出しきれるようにと願っている。
全ての絵の飾り付けを終えた瞬間は、嬉しさとともに安心したのか力が抜けた。
もう描ける絵は描ききったから、暫く絵は描きたくないとも思った。
そしたら、なんと突然、アメリカからの経済危機。
自分はなんて運がないんだろうと思った。
そして皆から「絶対に絵は売れないよ!」と脅かされながら、展覧会が始まったのだ
が、蓋を開けてみると、今までで一番のお客さまの来場数となり、とても嬉しい結果
となった。
今回も本当に沢山の方々の支えや励ましによって無事に展覧会を終える事ができた。
心から感謝しています。
ありがとうございます。
この間までは、もう暫く絵は描けないと思っていたのに、今では次の絵の構想が幾つ
も浮かんでいる。
そして余談だが、僕達夫婦ともども沢山のお客さまから「オメデタですか?」と質問
されたが、残念ながら僕も嫁もお腹の中には脂身しか入っていません。そして何故、
男の僕のお腹を見てオメデタと聞くのか?
話がずれたが、今は実家のアトリエで依頼を受けた猫の肖像画を描いている。
以上が今年下半期の僕の個展報告でした。
今年も本当にありがとうございました。
来年も、どうぞ宜しくお願い致します。
神津善之介