タイトル:Paisaje de Pais Vasco 春の陽気に誘われて
サイズ:22 x 33 cm

 

さて気がつけば、スペインでの生活もあっという間に2ヶ月近くが過ぎて、
今月末29日には神戸大丸での個展が始まります。

「5月29日(水)から6月11日(火)大丸神戸店 8階、Gallery TOARTにて個展
*私は8日(土)9日(日)の両日で午後2時から夕方5時まで在廊させて頂きます。」

神戸のお近くにお住まいの方々には、ぜひお立ち寄り頂きたくお願い申し上げます!

という訳で、私はまた日本への帰国へ向け、絵の仕上げに追われる日々に入ったのですが、
実は先日、私が暮らすマドリードから南西へ300キロほど向かったカセレスという街まで日帰りで急遽車を走らせました。

ちょっと長くなりますが、是非皆様にもお伝えしたい話なので、少しだけお付き合いください。

もともとこれは、私が使わなくなり、4、5年前くらいに息子に譲ったカメラの話です。

通常、絵の資料用には一眼レフのデジカメを使って撮影しています。
でもそれは絵を描くために使う資料用の写真を撮る時で、家族や友人とのプラベートな思い出などは、ちょっと前までコンパクトデジカメを使って撮影していました。
けれど、だんだんとスマートフォンのカメラ性能が上がってくると、ほとんどそのデジカメは使うことがなくなり、私の机のタンスの中に眠っていました。

一方、少しずつ成長していく息子は、旅にで出るたびに大きな一眼レフで風景を撮影する私をずっと見ていて、ある日突然、自分もカメラで旅の風景を撮影したいと言い出しました。
そこで私はそのデジカメのことを思い出し、4、5年前に息子に譲ることにしました。
それ以来、息子も私の横で同じように旅の風景をカメラに納めていました。

そんな経緯のカメラですが、3年近く前に、絵の取材で訪れたカセレスの街のどこかで息子はそのカメラをなくしてしまいました。
何度も落としたと思われる場所を行ったり来たりして日が暮れるまで探しましたが、結局見つかりませんでした。
ホテルのレセプションにも「もし見つかったら必ず連絡をください」とお願いをして旅を終えました。
私に叱られたこともあり、カメラ自体や自分の思い出までがなくなったこともあり、あの日息子は随分と泣いていました。

几帳面な妻は画像データを移行したり、保存したりしてると思うのですが、ズボラな私はまさかカメラを無くすなんて思ってもいなかったので、今までの思い出は全てカメラのSDカードの中にそのままにしていたので、それが一つ残らず消えてしまったという訳です。
写真の中には昨年末に亡くなった母の写真もありましたから、今となってはとても惜しいことをしたと悔やんでおりました。

そんな事があって3年ほど経った今年の2月の頭、
自分の個展準備と、母が亡くなり一人になった父の世話で日本に滞在していた私宛にインスタグラム経由でダイレクトメッセージが届きました。
差出人はカセレス博物館で働いているコンスタンティーノさんという方からで、
「突然のお便りですみません。あなたはデジタルカメラをこの博物館でなくされていませんか?」という内容のものでした。

3年経って、すっかりその件を忘れていたこともあり、軽くボケの入った私は何のことだか全く把握できず、何かの詐欺メールか?と思ったのですが、記憶を辿って行くと、確かに私の息子はカメラをなくしました!それもカセレスで!!

でもそこで私にある疑問が湧きました。
「どうやって私のことを見つけられるの?
カメラやケースに、名前ましてやアドレスなんて書いてないのに?どうしたら私に辿り着けるの?!と。
周りの人々に相談しても皆の答えは「それは何か怪しい!!」でという答えでした。

そこで、私はわざわざ連絡をしてきてくれたコンスタンティーノさんに随分と失礼な質問をしました。
「あなたはどうやってそのカメラが私のカメラだと分かったのですか?」と。

すると彼からはしっかりとしたお返事が来ました。
内容は以下の通りです。
「私はカセレス博物館で働いております、コンスタンティーノと申します。
何年か前に、どなたかがデジタルカメラをこの博物館で忘れていき、長い間落とし物センターの棚の中に眠っていました。
そして誰もそのカメラを取りに来ないまま数年が経ち、同僚からこのカメラを捨てるようにと頼まれました。
私は捨てる前に、失礼と思いながらも中のデータを見てみると、中には沢山の家族との思い出が溢れていました。
その沢山の写真の中から、私は多分この持ち主は画家であろうと推測しました。
またその個展会場の写真の中に、壁に貼られた英語のテキストがあり、そこに多分あなたの名前であろうものが記載されていました。
それをインターネットで辿っていって・・・まぁそのような感じで、今あなたにメッセージを送っている訳です。
でもあなたを見つけられて本当に良かった。
この写真たちはきっと貴方にとっては宝物でしょうから、貴方の手元に戻すべきだと私は思ったのです。
あとはこのカメラをどこに送れば良いか?をご指示ください。
そして送料はご負担ください。カセレス美術館はその費用を負担することはできません。」

これは紛れもなく、私のカメラの話だ!!と本当にびっくりしました。
私は30年以上スペインで暮らしています。
たくさんのスペインの友人に助けてもらいましたし、素晴らしい人々にも出会えました。
友の為に尽力してくれるスペイン人は私の周りにもいます。
けれど、会った事もない、しかもユーラシア大陸の真反対から来た外国人観光客の為にここまでしてくれるスペイン人を私は知りません。
改めてスペイン人の優しさ、そして懐の大きさを感じ、とても感動しました。

これは絶対に直接お会いして、お礼を言いたい!
郵便で送って貰うだけなんて、それは失礼だ!!
そう思った私は「3月末にはスペインへ戻るので、その時に必ずご挨拶へ伺います!」と返事をしました。

そして、遅ればせながら、今週やっとコンスタンティーノさんとお会いする事ができたのです。
落とし物のカメラの中の画像情報だけで、日本に居た私を見つけ出してくださった恩人とお会いできた訳です。
本当に感無量でした!!

穏やかな顔をされたコンスタンティーノさんにお礼の気持ちを伝えながら握手をし、息子も彼なりの言葉でちゃんとお礼を言いました。
午後の日差しが差し込む博物館を直接彼から案内して頂き、とても優しい時間を過ごす事ができました。
博物館を全て拝観し、コンスタンティーノさんにお別れの言葉をかけていると、たくさんの従業員の方々も見送りにきてくださいました。
きっと「例のカメラの持ち主」として、ちょっとした話題になっていたのでしょう。一目見ようと集まってくれたのかもしれません。
そこで皆さんにもお礼を言って、私たちは博物館を後にしました。

とても貴重な経験をしました。

インターネット社会では嫌な話ばかりが目についてしまい、ネットが進化することと人々のモラルが進化することは決して比例していないという現実を痛感する今日この頃ですが、こんな風にネットが進んだからこそ出会えた「人の優しさ」というものを自分が直に経験すると、ネットというものの素晴らしさや、まだまだ人は捨てたもんじゃないのだ!という晴れやかな気持ちになれます。

往復600キロの日帰り旅でしたが、心はとても満たされました。
ただし往復を運転させられた妻は、腰を軽く痛めていましたが・・・泣笑

家に帰って、充電したカメラの画面には、今より随分と幼かった息子と、今はいない母が、並んで笑って写っていました。
懐かしい写真でした。

コンスタンティーノさんとカセレス博物館には心から感謝しています。

人は捨てたもんじゃないぜ!!今日はそんなお話です。

もし、どなたかがカセレスに行かれる際は、是非とも博物館へ行ってみてください。
そして、コンスタンティーノさんを探して、
「私はヨシの知り合いだ。ヨシが宜しく!と言っていたよ」と必ずお伝えください!!

神津善之介 拝

カセレス博物館でのコンスタンティーノさんと息子と私のスリーショット!!

Esta es la historia de mi cámara usada, la que regalé a mi hijo hace cuatro o cinco años.

Hace casi tres años, mi hijo perdió su cámara en algún lugar de Cáceres cuando nosotros estuvimos allí de viaje en búsqueda de inspiración para mis pinturas.

Estuvimos buscando la cámara hasta el anochecer, yendo y viniendo muchas veces al lugar donde creíamos que se le había caído, pero nunca la encontramos. Yo regañé a mi hijo y él lloró mucho porque había perdido no solo su cámara sino también sus recuerdos.

Yo mismo nunca pensé que perdería la cámara, así que no había hecho copia de seguridad, de modo que todos nuestros recuerdos desaparecieron.

Desde esa incidencia, pasaron casi 3 años…

Y a principios de febrero de este año, mientras yo estaba en Japón para una exposición y para cuidar de mi padre, recibí un mensaje a través de Instagram.

El remitente era un tal Sr.Constantino, que trabajaba en el Museo de Cáceres, y decía: “Perdona por el mensaje tan repentino. ¿Ha perdido su cámara digital en este museo?”

Habian pasado casi tres años y al principio no me sonaba nada, ya casi lo había olvidado, pero después volvió a mi memoria y comprobé que, efectivamente, mi hijo había perdido su cámara, y… ¡fue en Cáceres!

Pero entonces me vino otra pregunta a mi cabeza.

¿Cómo pudo el Sr.Constantino encontrarme?

Mi cámara no tenía mi nombre ni mi dirección. ¿Cómo pudo encontrarme?

Cuando pedí consejo a la gente de mi alrededor, su respuesta fue: “¡Hay algo sospechoso en eso!”.

Así que le hice una pregunta un poco brusca al Sr.Constantino, quien en realidad se había tomado la molestia de ponerse en contacto conmigo:

¿Cómo sabía que la cámara era mía?.

Y esta fue su respuesta:

“Me llamo Constantino y trabajo en el Museo de Cáceres.

Hace unos años, alguien dejó su cámara digital aquí en el museo y ha estado mucho tiempo en la estantería del centro de objetos perdidos.

Y como nadie vino a buscarla, mi compañera me pidió que la tirara.

Antes de tirarla, miré bruscamente los datos que contenía y descubrí que estaba llena de muchos recuerdos familiares. Así que pensé que esta cámara debía devolverse a la familia.

Por las fotos, supuse que el propietario era probablemente pintor. Además, entre las fotos del espacio de exposición, había un texto en inglés en la pared con su nombre.

Lo seguí y… bueno, así es como te envío ahora el mensaje.

Pero me alegro mucho de haberte encontrado.

¿Ahora sólo necesito saber dónde enviar esta cámara? Por favor, indícanos que la enviemos a la siguiente dirección.

Y por favor, pague los gastos de envío. El Museo Cáceres no puede cubrir esos gastos”.

Me sorprendió mucho saber que esta era, sin duda, mi cámara perdida.

He vivido en España durante más de 30 años y he tenido muchos amigos españoles que me han ayudado, y he conocido a muchos españoles maravillosos que hacen mucho por sus amigos.

Pero no había conocido a ningún español que hubiera hecho tanto por unos turistas japoneses
a los que nunca había conocido.

Me conmovió la gran amabilidad y generosidad de los españoles en general.

Definitivamente, ¡quiero conocerle en persona y darle las gracias directamente!
Así que respondí: “Volveré a España a finales de marzo desde Japón, así que le visitaré para agradecerle personalmente”.

Y, aunque con algún tiempo de retraso, esta semana, por fin, pude conocer al Sr. Constantino. Por fin conocí al gran hombre que me encontró con sólo la información de las imágenes de mi cámara perdida.

¡Me conmovió de verdad!

Constantino y yo nos dimos la mano y le dimos las gracias, mi hijo también se lo agradeció a su manera.

Fue una experiencia muy bonita y valiosa.

Cada día veo tantas historias desagradables en la sociedad de internet, y a menudo me doy cuenta de que la evolución de internet no es proporcional a la evolución de la moral de la gente.

Pero cuando experimento la amabilidad de la gente que he conocido gracias al progreso de internet, me doy cuenta de lo maravilloso que es, y de que la gente aún no está abandonada.

Cuando llegué a casa, en la pantalla de mi cámara recargada vi a mi hijo, mucho más pequeño que ahora, y a mi madre, ya fallecida, uno al lado del otro sonriendo.

Una imagen muy nostálgica.

Estoy muy agradecido al Sr.Constantino y al Museo de Cáceres !!

Yoshinosuke Kozu Mayo,2024

ギャラリー>新作 更新しました 2024/02/19