昨年は自分自身や絵と向き合う時間がいつもよりも多い年でした。
そして街を歩いているときに目に留まる景色も、いつもとは違うものに興味を引かれるようになりました。
そのなかで、特に私を惹き付けたものは、街の壁に描かれる「GRAFFITI」と呼ばれるストリートアートでした。
このコロナの影響で、スペインも経済的に大きな打撃を受け、人々の暮らしは大変厳しくなりました。
そうなると、都市は荒れ、壁の落書きが昔より格段に増えます。
マドリードの年期の入った建物の壁に、政府への侮辱的な汚い言葉、もしくは皮肉やユーモアに富んだ言葉、描き手自身の名前などが乱雑に描かきなぐられています。
街の中に身を置く自分という存在の証明や、ストレスの矛先を、若者たちが壁にぶつけるように描くのです。
私はこの違法なアートを見かけるたび、自分の絵の中にはない魅力を感じました。
イラストのような壁の絵にも面白いものはありますが、何より文字の力に私は強く惹かれます。
そして私も、文字と絡ませたものを描いてみたいと思うようになり、新しく始めた実験シリーズがこの「落書きシリーズ」です。
実際の壁に描いてしまっては犯罪になってしまいます。
自分で外壁のような支持体を作り、その上に文字と絵を描きました。
イメージとしては街の壁に書かれた文字の横に、私なりの返答を絵にして添えた感じです。
文字の内容も、ネガティブなものは嫌だったので、「愛、平和、希望、知恵、信仰」などのカトリックの教えでよく使われる言葉を選びました。

タイトル:La Margarita 壁とマーガレット
サイズ:21 x 45 cm