それぐらいの歳になってくれると、
やっと自分の中に残る幼い頃の記憶と重ねることができ、
男の子がどうやったら楽しいのか?が分かるようになってくる。私は滅多に息子と遊んだりしないが、
たまに気が向くと、自分が幼い頃に好きだった遊びに息子を付き合わせている。
マドリードの公園で、まわりの皆がサッカーをしている中、
息子や息子の友達らとは野球やドッジボールをしたり缶蹴りやドロケーをして、
まわりのスペイン人からは好奇の目でみられている。また最近、息子に自我が芽生えつつあり、まず彼に「好み」というものが出てきた。
外で遊ぶとき以外で、親の私が好みまで押し付けているつもりはないが、
たまたまなのか、息子の好みが私の子供の頃の好みと凄く似ているように思う。
たとえば、今また80年代の流行が戻ってきていて、ここ2、3年では、
MA-1と言うジャンパー(今はボンバージャケットというらしい)が流行っている。
80年代、幼かった私はハリウッド映画「トップガン」にドンピシャでハマった。
(そう、若かりし頃のトムクルーズの出世作だ。)
その映画でトムクルーズが着ていたMA-1やG-1ジャンパーがもの凄くカッコ良く映った。
米海軍のワッペンがベタベタと貼ってあるヤツだ。
先日たまたま通りかかった店先に飾ってあったそのジャンパーに息子が一目惚れした。
嬉しかった私は、さっそく安いMA-1を買って、F-14トムキャット(戦闘機)や、
NAVY(米海軍)のワッペンをいっぱい貼付けてやった。
息子は大喜びで、毎日着ている。
私が「やっぱカッコ良いよなぁ」と眺めていると、
「戦争のものなんて着せないで!良くないよ!そう言うものを好きにさせるって!」
と嫁が全くの正論で怒ってる。
確かにその通りだ!ぐうの音も出ない。あんたが正しい、ああ正しいよ。
・・・でも・・・でもね。嫁よ!(少し説明させてほしいのだが)
そんな難しい事じゃないんだよ。私たち男は、ただ、ただ、カッコ良いのが好きなんだ。
男はカッコ良いものを欲しがるし、カッコ付けたい生き物なんだ。
それは子供でも大人でも一緒で、仮面ライダーやスポーツがまさしく良い例さ。
思考の判断基準が、得をするとか、安全だからではなく、男としてカッコ良いか?なのだ。
例えば、人を傷付けたり、悲しませたりする事は男としてカッコ悪いことだし、
平和を守り、人を助ける事はカッコ良いことだ。
カッコ良いと感じるツボは人それぞれだから何がカッコ良いかに共通定理はないし、
ストーリーのカッコ良さに惹かれる人もいれば、見た目のカッコ良さに惹かれる人もいる。
男は皆、車だってバイクだって服だって携帯だって手帳だって、仕事だって生き方だって、
其々自分の身の丈の範囲の中で、自分がカッコ良いと思うものを選択したいんだよ。
だから今の息子の「F-14戦闘機の機体はやっぱりカッケーなぁ!」と言う思いに、
「戦争って面白いなぁ!やりたいなぁ!」と言う思いは入っていないのさ。
それが軽率と言えば軽率だけど、単純にその表面的なカッコ良さに憧れているだけなのさ。
ただそれだけ。ある意味、私たちはお馬鹿なのさ。
昔、軍服やモデルガンが好きだった私は、
大人になって戦争なんて、どうあってもしてはいけないと思っているし、
戦争はとてもカッコ悪いと思っている。
でも未だにカッコ良いものは大好きだ。
極端な話、私の絵だって、最終的な目標はカッコ良い絵が描きたい!だろう。
だから、嫁さんよ。
男はカッコ良いものを自分の傍に置いておきたいのさ。どうかそこを分かってくれ。
現に私はカッコ良いきみを傍に置いているんだから...。・・・ね?
とキメたつもりで嫁の方に振り返ったら、もう私のそばに居なかった。
いつものように怒るだけ怒って、私の言い分は聞かずに去っていった後だった...。
まだ春は遠いのか風が冷たい....。
息子よ、男ふたり、強く生きていこう。 ...な!
神津 善之介
*ギャラリー>新作 更新しました 2016/11/18