タイトル:Sign お羊様のお通りです。
サイズ:81 x 81 cm

 

今年ももうすぐ終りますね。

今月頭から始まった日経アートの件では多くの方々からご連絡を頂き、大変嬉しく思っ
ております。
ネット上で絵の販売をすると言うものは私にとって初めての経験なので、楽しみと緊張
が入り交じった感じです。
まだ引き続き掲載しております。
https://art.nikkei-ps.co.jp/
ご覧頂いてない方は、ぜひ一度覗いて下さいますと幸いです。

さて、私が暮らすマドリードは新型コロナの影響で、いつもと比べ、随分と静かな年末
です。
街の中心部に住んでいますので、いつも家の前は買い物客が多く行き交います。
それでも毎年のクリスマス前と比べると、やはり静かです。
そんないつもより静かな人通りの街と、派手に飾り付けられたショーウィンドウとのコ
ントラストは私を不思議な気分にさせます。

最近のスペインは私が暮らし始めた30年近く前のスペインとは随分と変わりました。
今はスペイン人にも外国人にも、この国はとても便利になりましたが、若い頃の私が感
じた魅力は若干減ってしまったように思います。
あの頃はいろいろと不便なことも多く、日本と比べると人々が持っているものも、売り
物さえも決して豊かではない国でした。
でもそんなことを忘れるくらい、心がとてもとても豊かな国でした。
日本から来た私にはスペイン人やこの国がすごく優雅に見えました。
特にバブルで浮かれていた日本から来た私には、この国は大変魅力的に映りました。

私はその時「人の優雅さや豊かさというものは収入や持ち物とは関係ないんだ」と言う
ことを学びました。
逆に言えば、幾らお金持ちでも優雅になれるとは限らないのだ、と気付かされました。
まぁその時学んだことの弊害もあり、未だに私は低所得者なのですが・・・(でも幸せ
です!)

人は生きていると、他人の芝は青く見え、ついつい比べてしまいがちです。
でも、今ある現状に満足できれば、不幸や物足りなさという感覚に陥ることは減ること
でしょう。
それに気付けたことが、19歳でこのスペインに住めた私の宝です。

けれど、あれから30年近くが経ち、今のスペイン人たちは、あの頃よりも少し変わっ
てしまったのかも知れません。
潤沢な物資に囲まれても、ブランド品で着飾っても、なおも新しいものを欲しがる人が
少なからず出てきました。
そして昔より彼らが抱えるストレスも増えたように見えます。
私が憧れていたスペイン人たちも、いつの間にか日本人やアメリカ人と同じような人種
に近づいてきてしまいました。

数年前、ブータンが幸福度世界一位だったのに、訪れる観光客が増え、その観光客の持
つスマホやタブレットを見たブータン人が同じものを欲しくなり、気が付けば自分を幸
福と思えなくなってしまったことと似ています。

自分の立ち位置をちゃんと把握でき、それに満足できるバランス感覚を持っている人で
ない場合、全てを知ってしまうよりも、知らないということの方が幸せだということも
あるのでしょう。
今に満足できない人は、新たなことを知って、欲が出てしまうと、自分で自分を苦しめ
てしまうかもしれませんから。
ただ、自分に満足してばかりいては、今度は進歩もできない・・・。
難しいですね。

私にとって今年は、いろいろな意味で自分を見つめ直すクリスマスとなっています。

また、絵描きにとって「孤独」と言うものが大事なエッセンスになっているからなのか
、「クリスマス」というものについて考える時、私は自分が幸せなクリスマスの輪の中
にいるよりも、外から幸せな人を眺めるようなクリスマスが好きです。

ですから、どうか、皆様にとって、今年のクリスマスがほんの少しでも笑顔になれる、
心暖かいものになりますように・・・。
スペインから心を込めて祈っています。

そして、私は今年も沢山の方々に助けて頂き、お世話になって、どうにか年を越えるこ
とができます。

絵を描いて、それを売って生きていけるなんて、まさに奇跡のようです。
スペインに初めて降り立った19歳の私にとってそれは夢でした。
今まで私は多くの才能ある若い絵描きを見てきましたが、彼らが今でも絵を生業にでき
ている訳ではありません。
そう考えると自分がとても幸せなのだと実感しています。
今年を振り返り、皆様に心より御礼申し上げます。

ありがとうございます。

最後になりましたが、
皆様にとって、来年が穏やかで安らかで、悲しみと不安の少ない年になりますように・
・・。
強く強く祈っております。

感謝と愛を込めて!

神津 善之介 拝

ギャラリー>新作 更新しました 2020/6/12