タイトル:Resonancia no.28 “La nana a un gato” 夢の中で
サイズ:41 x 30 cm

 

この度は私の25周年に当たる、記念の個展にお運び下さいまして、誠に有難うございました。

この個展は非常に自分勝手な想いで始めたシリーズ「共振」を展示することにより、音と色のお互いが持ち合う周波数の共振作用を皆様に感じて頂きたく、展覧会「音画(おんがく)」としてを開催いたしました。

沢山の方々にお運び頂き、色々なご感想やお考えを頂戴し、ますます絵の奥深さや面白さを私自身が体感できました。
心より御礼申し上げます。

昔40歳だった頃の父が書いた楽譜に、今50歳の私(息子)が絵付をしました。
自分勝手極まりない親孝行ですが、その絵に対して、何も言わない昭和一桁の父を見て、私は一安心しました。
父が何も言わないということは、私にとっては褒め言葉であるからです。
40歳の父の楽譜はとても精密で繊細で、それを私が絵筆を使って破壊しながら再構築する罪悪感と高揚感は、とても幸せな時間でした。
なんかずっと昔、父とキャッチボールをした時のような気持ちでした・・・。

そして、この上の絵だけは唯一、他の絵と違っていて、
何も音符の書いていない古い五線譜に、私が先に猫の絵を描き、その後で、今91歳の父が音符を書き入れました。
他の絵とはプロセスが逆なのです。
その歌のタイトルが「夢の中で」です。

老眼鏡と虫眼鏡を使い、細かく書けない父が書いた音符です。
古くて取れなくなったセロテープやコーヒーの染みと共に、そのひん曲がった音符がなんとも愛おしい楽譜です。
そこに11歳になる私の息子がスペイン語で、
「ある猫への子守唄。私が敬愛する音楽家へ捧げます。」と書き入れました。
非常にパーソナルな感情が篭った絵なので、これは非売品にさせて頂きました。

私は常々、絵とは非常に個人的なもので、作家が抱いた感情や思いを恥ずかしげもなく吐露する行為だと申しておりますが、今回の個展はその極みだったかもしれません。

そんな自己満足の塊のような私の個展を、その空間を共有して下さいました皆様には、心からの感謝と愛をお送りしたいです。
誠に有り難うございました。
皆様の優しさに、心よりの御礼を申し上げます。 

神津 善之介 拝

 

ギャラリー>新作 更新しました 2022/12/26