タイトル:光に向かって

 

唯一、皆様との繋がりである、
このページをしばらく休んでしまいました。
大変ご無沙汰をしてしまい、誠に申し訳ありません。

多くの方々よりご心配のメールを頂きました。
心より厚く御礼申し上げます。
皆さんはお元気ですか? 元気でいらっしゃることを強く祈っています。

私たち家族はスペイン、マドリードで3人仲良く暮らしております。
1月、無事に個展が閉幕し、1月末にはスペインに戻ってきました。
今思い返しても、まだ大して時間が経っていませんが、随分と昔のような気もします。

この度の新型コロナウイルスはスペインでも多くの人々に被害を与えています。
昨日3月27日の地点での数字ですが、
感染者数は累計で56,188人(死亡4,089人) 。
一日前の発表からの感染者数の増加は8,578名(死亡:655名の増加)、
医療従事者も約1万人以上が感染しています。凄い勢いです。

こんなことになり、ここ1ヶ月は通常とは異なる日々を過ごし、
あっという間に時間は過ぎ、
ご心配して下さる皆様への御挨拶をホームページに掲載したいと言う気持ちと、
こんな時にこんな私にどんな言葉が紡げるか?という気持ちが交差して、
ついつい遅い更新になってしまいました。
本当にすみません。

私のページはニュースページではないですから、
スペインのニュースで流れているものを報告する(暗い話題がほとんどです)のではなく、
私自身の身の回りの話を書きます。
それでも、すこし長い文章になります。

3週間前に首相から発せられた非常事態宣言の元、
今は外出禁止令が出ているため、基本だれも家から出てません。
街はゴーストタウン化しています。
この外出禁止令は先週末の首相のスピーチで、
最低でも後4週間は続くらしいので、計約一ヶ月半以上は自宅軟禁といった感じです。
ただし、この国からの外出禁止命令はまだ延びうる可能も大いにあります。
フランス同様に外出禁止を6月いっぱいまで延ばし、
子供は9月までの学級閉鎖と言う案も出ています。
勝手気ままなスペイン人達が今回は真剣にしっかりとこの命令を守っています。
驚きますが、それほど、今は緊迫した状況と言うことです。

スペインでは今、電話やネットでの問診方式の検査を行っており、
その数も感染者数に反映しています。
国としても、ちゃんとした検査をしたいのでしょうが、PCR検査キットが足りていません。
私の妻も風邪っぽかったので、そのネットでの問診サイトを試した結果は
「陽性の可能性あり。外出禁止令の厳守」でした。
ハッキリと検査できないことは多少のストレスになりますが、
妻の症状と違い、もっと重篤な人が先に検査するべきですから仕方のないことです。

食料と薬だけは購入しに外出できるので、私だけは三日に一回くらいのペースで外に出ます。
ただ、外には警察官が見回りをしていて、意味の無い外出が見つかると捕まって、
罰金刑を課されるので、ふらふらと散歩などはできません。
紙不足は一段落して、マスクは無理ですが、大抵のものは手に入ります。
Amazonのような配達を主とする企業は今までやっていましたが、
来週からはその営業も一時停止になります。
我が家の経済力では無理ですが、お金持ちは皆ルームランナーをAmazonで買ったそうです。

息子は元気で、最初は休校に浮かれていましたが、今じゃヒマすぎて荒れてます。
いつもは週3で部活のサッカーなのですが、
今は家から一歩も出られずに学校から毎日届く宿題をやるくらいなので、
これじゃ監獄だぁ!!と叫んでいます。
ここ数日、最近の映画も見飽きて、昔のジャッキーチェンの映画見せてたら、
カンフーに興味を持ち出し、リビングで怪しいカンフーと筋トレを始めました。
よいエネルギーの発散にはなっています。

さて、この外出禁止令の政策は、スペイン国内でかなりの経済危機を生むでしょう。
この警戒態勢発令中に一時解雇をされた人々が100万人以上です。
外出禁止のこんな状況では販売業にとって大きな打撃です。
そのうえ国はコロナウイルスの影響での解雇を違法としました。
でも実際、物流も経済も止まっていますし、労働者を抱える企業だって大変でしょうし、
そこで働く人たちの不安はもっと大きいです。
そんな中でも、真面目に命令を守るスペイン人達は、彼らの陽気さを忘れていないので、
今の環境下で、その陽気さは随分と救いになっています。

さて私の話になりますが、
私自身も画材が足りなくなってきていますから、
買いたいのですが、勿論街は閉まっていますし、
ネットでも買えないので困ってしまいます。
手元に残っている画材だけでの絵の制作は難しくなっていますが、
自宅に居ることが何より大事ですから、そんな状況下の窮屈な我が家で、
絵以外にもいろいろな事を考えさせられました。

ヨーロッパという大きな力を持つ共同体が抱える地続きの強さと脆さを感じました。
また、現代社会の中の私たちはこのような災害や悲しみの中で、
改めて自分や人類というものを省みることができるかも知れません。

昔、ペストが流行した後に、
ボッカチョは「デカメロン」、カミュは「ペスト」を執筆し、
絵画の世界であっても、そのような疫病から幾つもの影響を受け、
最終的にはルネサンスへと繋がったはずです。

私は私なりに、どうしたら自らの仕事で多くの人が抱くこの悲しみや苦しみを、
乗り越えられるのかと考えました。
長い自問自答の末に私が行き着いた答えは「再生」でした。
どんな事があっても、いつか人はまた再び歩き出さなければならない。

ならば「私は光を描こう。」「それが自分の使命なのではないか?」
私の頭に浮かんだ一つの答えでした。

私が描きたい光とは、自然への敬意であり、未来への望みです。

その光は何も特別なものではなく、何処にでも転がっているけれど、
なかなか人の目には留まらず見過ごしてしまいがちな光です。

私はいつもそんな光を表したいと絵に向かっているのですが、
いつの間にか絵を描く行為自体が、私の体の中にあたたかな光が灯すのです。
そして、そこから生まれる絵がいつか、世界の何処かに居る人と共感でき、
その人の気持ちを少しでも暖められたら、どんなに幸せかと思います。

手元に残る絵の具と筆で、また絵を描き始めました。
今の私が描ける絵を!
新しい絵が描き上がってきたら、また更新させてもらいます!!!

くれぐれも皆様も元気で過ごして下さい。
ウイルスよりもしぶとく、生き抜いてやりましょう。
スペインより 愛を込めて!!

神津 善之介 3月28日

ギャラリー>新作 更新しました 2020/1/13