Fontainebleau テーブルの風景
タイトル:Fontainebleau テーブルの風景
サイズ:22×33cm
気の匂いと空の表情で私は季節の変化に気づかされる。

11月末からの福岡三越での個展と12月頭の東京青山での個展に向けて、
絵の仕上げに追われる毎日だが、絵を描く合間にアトリエから這い出て外にでると、
随分と秋が深まってきた事に驚かされる。

アトリエやリビングの窓から入る光の加減も変わってきた。
上の絵(福岡三越に出品する絵)のように外光が優しくなったように感じる。
この絵はフランスのフォンテーヌブローと言う村に滞在した時に、
泊まった家のダイニングの風景だ。

ハロウィンはどちらかと言うとカトリックとは関係ないらしく
私が暮らすカトリック国であるスペインではさほど盛り上がる事もなく、
既にクリスマスのデコレーションを始めている店もある。

12月1日から始まる青山プロモアルテでの個展がクリスマス風景画展と言う事で、
夏の終わり頃に福岡三越に出す絵が一段落してからは、
ずっと今もまだクリスマスの風景を描いている。
そしてやっと私の描いている絵の中の季節と世の中の季節とが近づいてきた。

と言う事で今日は福岡三越の後に開催する東京青山の個展の話を書かせて頂く。

このホームページ上で何度も書いているが、
私は本当にクリスマスが大好きなのだ。
好きすぎて、とうとう今年、長年の夢だった「クリスマスの風景画展」を開くほどだ。
そのためにここ数年はいろいろな街を訪れて、クリスマスの風景を取材した。
最初に訪れたのがクリスマスのドイツ、ドレスデンだった。まだ息子も生まれていなかった。
次の年にロンドン、次にパリ、そして昨年がドイツ、ローテンブルグとイタリアのベネチア。

まぁ、ひねくれた私が描くので、いわゆるクリスマスっぽい風景ではないかもしれないが、
私の心にとまったクリスマスの一コマと言う絵を描いている。

クリスマスを好きな理由は、まず何よりも美しく彩られた町並みや、
その雰囲気の中で嬉しそうに浮き足立つ人々を見る事が好きだからなのだが、
それともう一つ理由があり、
人を思いやったり、人から愛をかけられたりするような感情と、
逆にそれを目の当たりにして自分の孤独を改めて知る感情。
今の世の中で、クリスマスは一年で一番この感情のコントラストが激しい日だと思う。
その不思議で特別な一日を傍観することが、私がクリスマスを好きなもう一つの理由だ。

だから今回のクリスマス個展に出す絵は、私自身がその絵の中に入ってしまうような、
自分が暮らすマドリードの風景ではなく、
傍観者や、旅人と言うスタンスで俯瞰で見られるようにいろいろな街を旅した。
これは24年前に初めてスペインのマヨルカ島で暮らし始めた時に、
一人で過ごす本場のクリスマスで、孤独と言う寂しさよりも、
孤独と言う安堵感を味わった時からの私とクリスマスとの向き合い方かもしれない。

出品する絵はどれも派手ではない、クリスマスのささやかな風景なのだが、
その絵の中にはその街に暮らす人の優しさや喜びとともに、
それを傍観する私の心地よい孤独感が下地に塗り込められている。

12月は是非そんな私の絵を見に来て頂きたいと願う。

神津 善之介 拝

ギャラリー>新作 更新しました 2016/2/14